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JBpressの名著探訪シリーズでは、野中郁次郎先生の追悼として、『二項動態経営』について書きました。彼の哲学者としての側面にフォーカスしてまとめています。
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彼の理論には、温かみと深みがある。おそらくそう感じるのは私だけではないだろう。本来経営理論には冷たさも温かみもないはずだが、なぜか彼の提唱するセオリーからは人間らしさを感じることができるのだ。
それは、彼が「知識とは何か」という問いに向き合い続けたことにある。この問いは、経営学の範疇を超えて、「人間とは何か」という根源的な問いに直結していく。つまり、哲学の領域にまで踏み出さない限り、答えを出すことはできないのだ。
だからこそ、結果的に出来上がった彼の経営理論には、人間的な温かみと哲学の歴史から生まれる深みを感じることができる。一般的な戦略論は、「どの事業をどうすべきか?」「どうすれば競合に勝てるのか」という示唆にとどまるのだが、彼の戦略論からは「私たちはどう生きるのか?」というメッセージまで受け取ることが可能なのだ。