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ビジネス書

『Rule Makers, Rule Breakers』を読んで、カルチャーを考える

Rule Makers, Rule Breakers: How Culture Wires Our Minds, Shapes Our Nations, and Drives Our Differences (English Edition)

面白そうで未邦訳だったので、たまには洋書にもチャレンジ。

国や組織の「カルチャー」に着目した書籍なのですが、まぁとにかく軸がシンプルでわかりやすい。
その比較軸は、

"tight(厳しい)" or "loose(寛容)"

たったこれだけ。

ホフステードが6次元でやったチャレンジをこの書籍では1次元だけで語り尽くそうとしています。
まぁそういう意味ではいろいろ無理があるのですが(笑)、シンプルなだけに理解しやすいし、小難しくないので応用力も高い。
実践的な書籍だと思います。



さて、個人的に面白かったことは、なぜ"tight"なカルチャーが出来上がるか、という点。
そしてこの本の答えは「脅威」の存在。
つまり、大きな脅威が明確にあれば、脅威に対応することが最優先になってくるわけです。
だから、必然的に目つきは鋭くなるし、ぼーっとしている人がいれば、「ちゃんとしろ!」ということが文化形成の基本になる。

他方で、脅威の存在が曖昧であれば、「まぁとりあえず楽しくいこうや」となり、他者に対しても「寛容」になってきます。

もっとも厳しいカルチャーを持つパキスタンと、その対極にあるニュージーランドを比較すると、その脅威に対する認識が全く異なるわけです。
確かにそれはなんとなくわかる気がします。

そして、これは企業も同じで、航空業界なんかはちょっとしたミスがまさに命取りになるわけで、そうなるとカルチャーは自ずと"tight"になってきます。
他方で、人命に関わることはなく「最後は謝っちゃえばなんとなかる」という業界からしたら、「寛容さ」が育まれやすい。
(まぁこの辺は、『AI経営で会社は甦る』の中で冨山さんが言ったS(Serious)の世界とC(Casual)の世界にも通じる区分ですね。)


(↑名著です)

いずれにせよ、国や企業のカルチャーというものは、外部環境と密接不可分なわけですよね。
長らくそういう環境にいたからこそ、自然とそういうカルチャーが育まれる土壌があったと。

だから、「我が社のカルチャーはこうでありたい」という願望を語ることは良いのですが、いくらそういう願望を持っていても、明確な脅威があればそんなことは絵に描いた餅で終わってしまうわけです。
最近はカルチャーに対する問題意識が強くて、ややもすると外部環境と切り離されたカルチャー論を聞く機会も増えてきましたが、それだけが前面に来る議論というのはやっぱりアレなんだなぁと改めて思いました。

ってことで。洋書なのでおそらく読む人はいないでしょうが(笑)
せっかく読んだんだからちゃんと言葉に残しておいたぜ!という自己満足8割。