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『林原家』から学ぶ「同族企業」の難しさ

林原家 同族経営への警鐘

いやはや、なかなか強烈な読み物でした。
林原の破綻についてはうっすらと知っていた程度ですが、一連の書物を読み、「同族企業のリアル」を体感しました。
現役辣腕経営者だった父親を19歳で亡くして後を継ぎ、就任して間も無く林原を「バイオ企業」へと導くその天才的なセンス。
しかしながら、「研究以外は興味なし」として、社長でありながら「決算書を一切読んだことがない」という脇の甘さ。
結果的にはこのアンバランスさが、不正会計の下地を作り、優良企業を一気に倒産へと導いていきます。



この方、研究者としては間違いなくとても優秀な人だったはずなんですよね。
もし研究職としてどこか大企業に入社していたら、おそらく相当な人物になっていたはず。
しかし、跡取り息子として、「社長」にならざるを得なかった。

だから、興味のない管理業務は実の弟に任せっぱなし。
弟だから安心感がある一方で、怪しいことがあっても疑うことができず。
そして弟は弟で、絶対的な存在である長男には何も言うことができない、という歪な人間関係・・・。

周囲は周囲で、経営において決して口出しできない「アンタッチャブルな領域」があることを認識し、空気を読んで振舞わなくてはならない暗黙の掟・・・。

普通の企業にとって当たり前な「健全なコミュニケーション」が、一切封じられたこの企業体質に、同族企業の難しさを感じます。

さらに興味があって、弟さんが書いた書籍『破綻』と『背信』を立て続けに読んでみたのですが、これまたびっくりで。
弟さんは不正会計を行った当事者なんですが、不正会計をやったことは認めつつも、「こんなことは些細なこと。地方の非公開同族企業であれば当たり前。そのうち帳尻合わせられるから問題なし」という独特のロジックを展開されていました。
おそらくこういう難しい同族企業というのは、古今東西どこにでもあるんだろうなと・・・。

こういう同族企業の中でも健全なバランス感覚を持つために、「経営のリテラシー」を理解することはとても大事なことなんだとしみじみ感じました。
同族経営で悩んでいる方、ここに答えらしきものは一切ありませんが、「やってはならないこと」を考えるヒントはたくさんあると思います。

(この辺は、戦国時代の「家の経営」から学べることも多くあるんだろうなぁ)

破綻──バイオ企業・林原の真実


背信 銀行・弁護士の黒い画策