学びデザイン Official Site

Blog ブログ

Contents Library(コンテンツライブラリ )

『グラスホッパー』を読み、「テクノロジー」と「脳内対話」を考えた

グラスホッパー

ご存知伊坂幸太郎さんの大ヒット小説。
僕の伊坂さんの歴史は、たまたまWOWOWで見た『バイバイ,ブラックバード』が面白く、その次に小説で『AX アックスを読んだだけのにわかファンなのですが、哀愁とコメディ、ハードボイルドが同居するなんとも言えない世界観が大好きです。
時間さえ許せば全作読んでみたい。

さて、本作。3つのバラバラのストーリーが中盤以降に一気にからまり合い、そして前半の伏線を回収しながらエンディングへとなだれ込んで行くストーリーテリングに、時間を忘れてページをめくってしまいました。
一応、あらすじを紹介すると、こんな感じです。(wikiより)

***

妻を轢き逃げした男に復讐するために職を辞し、裏社会で男の父親が経営する会社に入社した鈴木。ところが、男は自分の目の前で車に轢かれてしまった。業界には「押し屋」と呼ばれる殺し屋がいるという。

命じられるままに押し屋を追った鈴木だが、待っていたのは妻と幼い息子のいる家庭だった。温かい家族に戸惑う鈴木だが、会社からは息子の敵を討たんとする電話がかかってくる。

一方、自殺専門の殺し屋・鯨は過去を清算するために、ナイフ使いの殺し屋・蝉は手柄を立てるべく押し屋を探していた・・・。

***



さて、本作は小説なのでネタバレを避けるために、本筋とは関係ない部分での僕の印象に残ったことを書き残しておきます。
それは、主人公が亡くなった奥さんと脳内で対話するシーン。

右足を前に踏み出す。靴を地面から上げようとしたが、その時に声を聞いた。
「勝手に決めないでよ 」実際の声ではない。
ただ、亡き妻が 、寄り添うように鈴木の顔に口を近づけ、「何でわたしが、死にたがらないといけないのよ」と可愛らしい、彼女らしい笑い声を発した。ように聞こえた。


これは終盤の一シーンですが、こんなような亡き妻との「脳内対話」の場面がこの小説頻繁に出てきます。
そして、この脳内対話が常に主人公に勇気を与え、結果的に主人公を正しい方向に導いていきます。

こんな話を読みながら思い出したのは、ちょうど最近読んだこのWIREDの記事。
亡くなった友人を愛し続けるために、その起業家は人格をコピーしたチャットボットをつくった



さっと読めるので、目を通していただきたいのですが、「亡くなった親友との会話の記録をチャットボットに読み込ませ、まるで亡くなった親友本人のような会話ができるようにした」というのが開発の原点にあるチャットボットです。
まるでジョニー・デップのSF映画『トランセンデンス』のような思想ですね。
実際にこの記事だけでは現在何ができるのかはわかりませんが、ちょっと驚きでもあり、一方で実現可能性を感じる話でもある。

この『グラスホッパー』の主人公は、あくまでも回想や妄想としての脳内対話なのですが、いずれ遠くない未来において、こういったことがテクノロジーで実現する世の中がくるのかもしれません。

「お前ならどう考える?」と問うたところ、チャットボット上の亡き妻が「私は反対よ」と返答した。
「じゃあやめとくか・・・」

なんて。

私は勝手にこの『グラスホッパー』のテーマを、「死者との対話」と考えているのですが、今後はここにテクノロジーの要素がリアルに入り込んでくるのでしょうね。
その世の中で私たちの幸福度は高まっているのだろうか。
なんか小説の内容とは関係ないんですが、そんなことに思いを馳せながら読んでました。

今回は「あ、これWIREDの話だ!」なんて余計な連想ばかり考えながら読んじゃったので、次はしっかり没入しながら読もう(笑)!