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『虐殺器官』を読んで 〜『ホモ・デウス』の世界の解像度を高める

虐殺器官

噂には聞いていて、気にはなっていたのですが、これはやっぱすげーわ。
ちょっと先の未来を描くSF小説です。



かの『ホモ・デウス』においては、身体機能がアップデートする人類の仮説が描かれていたのですが、かなり世界観に距離感がある一方で、丁寧な説明がなされていなかったため、理屈は理解できてもリアリティを持てなかった人も多いと思います。
でも、この小説を読むと、身体機能のアップデート、特に「脳のアップデート」というものがどういうものなのか、そしてそれを実現した時の戦争がどうなるのか、ということがよく分かります。

もう少し具体的にいうと、その時点では脳が「モジュール」として、脳の機能が今以上に詳細に理解されているんですね。
したがって、どこをどういじれば人間はどうなるか、ということがより詳細にわかっている。
たとえば、兵士たちは脳にある「痛みを感じる部分」を「痛覚マスキング」という麻痺処理を施されて、戦場に向かいます。
そうすると、「痛いだろうという認識はできるけど、実際に痛みは感じられない」という状態になるわけです。
こうなると、体がどうなろうとも、文字通り「息が絶えるまで戦う」という究極のソルジャーができます。
さて、この究極のソルジャー同士が戦う戦場はどんなことになるのか・・・。

さらに、この本では、「言語と脳の関係」というのが最大のテーマでもあります。
言葉で脳をどれだけ操ることができるのか。
ここに、また「脳のモジュール」という概念が関係してきます。
もし、「とある文法」を大衆に語り続けることで、多くの人たちの「特定の脳のモジュール」の働きを止めることができたら、一体どんな世の中になってしまうのか・・・?
これ、無茶苦茶大胆なストーリーでもあるんですが、小説としてリアルに描かれるもんだからちょっとゾッとします。

ということで、『ホモ・デウス」が描く人体のアップデートということの世界観の解像度を高めるという目的で読んでみるとおもしろいと思います。
ま、そんな文脈なくても、シンプルに楽しめる作品ですけど(笑)

映画にもなっている作品なので、今度は映像で見よう!